阿部のメルマガ

紛争とエネルギー

1. お久しぶりです

阿部工業の阿部です。大変ご無沙汰してしまい申し訳ありませんでした。みなさまご存じの通り、2020年以降の社会はとてつもない荒波の連続の最中でした。いや今なお続いています。阿部工業は無事、とまではいきませんでした。2020年度の売り上げは20%減となり、ギリギリの状態で乗り切っていました。2021年も出だしは芳しくない状況が続き、あちらこちらへと動いておりました。後半になって半導体の動きが加速し、現在阿部工業にもその恩恵がやってきております。
この10年でみても大変厳しい状況でした。リーマンショックもしんどい思いをたくさんしましたが、今回の一連の動きは長く、そして先行きの不透明感の独特さで言えば筆舌に尽くし難いものがありました。もちろん、我々だけがそうではなく、社会全体がそうであったわけです。そういう意味では、我々の傷が極めて浅いと言えるのもまた、このメルマガをお読みいただいている皆様の多大なるご尽力の賜物。この場を借りて、改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
しかしながら、悪いことは重なるとはよく言った物で、会社内の重要なスタッフが2021年半ばには退職し、さらには初工程における機械が壊れるなど、社内状況を否応なしに再構築せざるを得ない事態も重なりました。こちらは、自社成長のチャンスととらえ、文字通り社員一丸となり改善、解決、進化、成長に挑んでいました。

2. 新たなる切迫状況。

さて、現在の阿部工業は堅調な状態となっております。大きかったのは、半導体業界の加速度的な回復と、それに続く成長がありました。さらに、いよいよ急回復を見せている既存領域に関して、従来からのお客さまの変わらぬご依頼を受けて、新しい成長段階と、品質向上のための挑戦段階へとシフトできつつあります。銀行様のお力をお借りすることもでき新しい重要機器の導入もかないました。ただ、この機器を扱うための人材と社内体制を再構築するのに大きな時間を要し、みなさまにはご迷惑をおかけしたしました。この場を借りてお詫び申し上げます。
半年ほど要したこの苦しい時期にも光明が差し込みつつあり、生産効率、品質ともに新しい水準へと前進する体制が整ってきました。受注回復と、新規受注のスタート時期にこの流れが合いつつあることは、我々にとって大変心強いことです。しかしながら、こうしたポジティブな状況の中で生じたウクライナ紛争が、我々に再び暗い影を落としつつあります。原材料の変動はすでにコロナ禍を経て始まっておりましたが、ここにきて、エネルギーという弊社における原材料の高騰がいよいよ深刻です。我々も例外ではなく、値上げをお願いしなければならないほど切迫した状況となってきました。

3. 現実と頭の乖離。

いろいろな状況が重なっております。社会状況を見れば、経済成長と電力需要の増大はかねてより予想されていたことであり、通信関連や自動車関連の進化にも新しい電力を要します。この需要増と、産業の進化という状況の中に、SDGsへの対応、再生可能エネルギーへの移行、とやってきた移行期にウクライナ紛争が起こったことは、やはり「重なるのだ」という表現を思い起こさざるを得ません。たとえば、今回の一連のエネルギー価格に関して、東京電力の値上げ幅は非常に大きい事で知られます。では、たとえば東北電力であれば、法律的に据え置きが指示されていることから、価格が据え置かれるという話もあります。しかし、すでに東北電力も他社同様に電力市場の値動きに合わせた価格設定でなければもたない、という申請を国にかけ、国が変動価格を容認することになっています。JEPXでの値動きを見ると、最悪の状態を考えるとどのくらいの負担となるのかすでに検討もつかないほどです。
こうした事態を打開するための値上げ措置には、強い抵抗を感じ続けています。これが私たちの頭の中です。しかしながら、現実はそれらをはるかに凌駕するいきおいで変貌しています。なにより、我々は利益を確保しなければ、次の時代のための投資ができません。皆様にはご理解いただいているかと感じておりますが、我々が利益を自分たちの懐に入れているのであれば、躊躇なく削り取ることができます。しかし、我々には、そこまでの余力も、また、もとよりそうした意識もなく、自らを律することで品質管理の向上に力を転換してきたという自負があります。そして、SDGsへの当然の対応も含め、進化し続ける社会とお客さまに必死で食らいつくための設備投資や、品質管理の投資を行ってきたという事実があります。もし、これらの投資を止めれば、結局「今の仕事」に対応できたとしても、来年、再来年には、変化についていけなくなり、お客さまに並走していくことから脱落せざるを得なくなるでしょう。これは絶対に避けたい。

苦渋の決断をせざるを得ないのか否か、今なお必死で考え続けています。